旅と歴史の記録帖

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内田康夫『江田島殺人事件』の舞台を訪ねて 〜物語と現実の風景〜

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内田康夫『江田島殺人事件』の舞台を訪ねて

浅見光彦シリーズで知られる作家・内田康夫。その作品の中でも、広島県を舞台にした異色作が『江田島殺人事件』です。本作は、瀬戸内海に浮かぶ静かな島「江田島」を舞台に、歴史と戦争の記憶、そして人間の業が絡み合う重厚なミステリーとして描かれています。

今回は、作品に登場する場所と、実際の江田島の風景を重ねながら紹介していきます。ただ観光地を訪問するだけでなく、物語の主人公になった気持ちで歩くことができるのも、この旅の魅力です。


江田島という舞台

江田島(広島県江田島市)

広島の宇品港よりフェリーで約25分。物語の中心舞台となるのが、広島湾に浮かぶ島・江田島です。現在は広島県江田島市として市制施行されていますが、作中では「静かな島」「歴史を背負った土地」として描かれています。

江田島は旧日本海軍の拠点として知られ、島全体に軍事史跡や関連施設が点在しています。内田康夫作品らしく、単なる観光地ではなく「記憶の土地」としての描写が印象的です。

旧海軍兵学校跡(現・海上自衛隊幹部候補生学校)

旧海軍兵学校

旧海軍兵学校

切串港から車で約15分。作中の重要な背景として登場するのが、旧海軍兵学校です。現在は海上自衛隊幹部候補生学校となっており、赤レンガ造りの建物群が今も残っています。

小説の中では、戦前・戦中の日本海軍の記憶と事件の謎が重なり合う象徴的な場所として描かれています。単なる建築物ではなく、「歴史の重み」を感じさせる舞台装置になっています。

旧海軍兵学校は明治時代から多くの海軍士官を育成した名門校です。現在は一部見学が可能で、レンガ造りの大講堂は圧巻。館内には当時の資料や写真が展示され、教育内容や生活の様子を知ることができます。

見学はガイド付きで、所要時間は約1時間半。予約なしで見学でき、開始時間の30分前から受付されています(平日3回、土日4回)。詳細は公式サイトをご確認ください。

今回は宇品港から9:30開始の見学に合わせ、8:10発の切串港行きフェリーに乗り日帰り旅をスタートしました。約30分で港に到着し、そこから15分ほどで正門へ。駐車場もあります。広島市内からアクセスしやすく、日帰り観光にもおすすめの場所です。

古鷹山(ふるたかやま)

江田島の最高峰である古鷹山も、物語の中で重要な舞台として登場します。山中で起きる出来事や遺体発見の場面など、ミステリーの核心に関わる場所です。

実際の古鷹山は登山道も整備され、瀬戸内海を一望できる展望地として知られています。作中では静寂と不気味さを併せ持つ場所として描かれ、物語に独特の緊張感を与えています。

江田島の町並みと港

作中では港や島の集落風景も随所に描写されます。観光地的な華やかさよりも、生活感のある港町として描かれているのが特徴です。フェリーの発着、静かな海、島特有の時間の流れが、事件の背景としてリアルに表現されています。

江田島には、切串以外にも呉からのフェリーが着く小用の港があります。


まとめ

『江田島殺人事件』は、単なる殺人事件の謎解きにとどまらず、江田島という土地が持つ「戦争の記憶」「歴史の影」「静かな島の空気感」を深く織り込んだ作品です。

実際に江田島を訪れると、小説の描写と重なる風景が数多く存在し、物語の世界観をよりリアルに感じることができます。土地の歴史と人間ドラマを結びつける内田康夫作品の魅力が、特に強く表れている一作だと感じました。

江田島を訪れる際には、ぜひこの作品を思い出しながら、島の風景と物語の重なりを感じてみてはいかがでしょうか。

広島県を舞台にした内田康夫作品には、『後鳥羽伝説殺人事件』(三次市・尾道市)、『鞆の浦殺人事件』(福山市)などもあります。