旅と歴史の記録帖

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内田康夫『鞆の浦殺人事件』の舞台を訪ねて|広島から日帰り旅

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内田康夫『鞆の浦殺人事件』の舞台を訪ねて|広島から日帰り旅

瀬戸内海の穏やかな海に面した港町・鞆の浦。古い町並みと常夜灯が印象的なこの地は、推理作家・内田康夫の人気シリーズ「浅見光彦」作品の一つ『鞆の浦殺人事件』の舞台としても知られています。

今回は広島市内から車で日帰りし、物語の面影を感じながら町を歩いてきました。歴史、文学、そして瀬戸内の静かな風景が重なり合う、特別な旅の記録です。


広島から鞆の浦へのアクセス

広島市内から鞆の浦までは、広島ICから福山西ICまで山陽自動車道を利用し、県道47号で約1時間半。途中には、みろくの里や道の駅アリストぬまくまがあり、休憩を取りながら向かうことができます。

道の駅を過ぎて少し走ると海が見えてきて、旅情が一気に高まります。今回は県営の鞆町鍛冶駐車場に車を停め、港方面へ向かいました。

石畳の路地、格子窓の町家、ゆるやかな坂道。小さな港町に足を踏み入れると、物語の世界へ迷い込んだような感覚になります。


鞆港と常夜灯・雁木

朝早く、観光客が少ない時間に港へ向かいました。鞆の浦の象徴ともいえるのが、港に立つ常夜灯です。江戸時代から残るこの灯りは、かつて航海の安全を見守ってきました。高さは約10mあります。

穏やかな海面に映る常夜灯の姿は美しく、作品の中で描かれる静かな情景を思い起こさせます。浅見光彦が歩いたであろう港の風景を想像しながら、雁木(石段)に腰掛けてしばし海を眺めました。

常夜灯と雁木

港の周辺には古い商家や町家が並び、歴史の重みを感じさせます。潮の香りと波の音が心地よく、時間がゆっくりと流れていきます。

観光地でありながらも落ち着いた雰囲気があり、ミステリーの舞台として選ばれた理由がよく分かります。また、ジブリ作品「崖の上のポニョ」のイメージの一つとなった場所としても知られています。


福禅寺・対潮楼からの眺め

港から少し歩くと、福禅寺・対潮楼があります。ここから望む瀬戸内海の景色は「日東第一形勝」と称えられた絶景です。

対岸に浮かぶ弁天島とそこに建つ弁財天福寿堂、さらに仙酔島を一望できます。静かな海に浮かぶ島々を眺めていると、物語の緊張感とは対照的に穏やかな時間が流れます。

福禅寺と對潮楼からの眺め

作品では、歴史や土地の因縁が事件の背景に絡み合います。実際にその場所に立つと、文字だけでは感じ取れなかった空気や距離感が伝わってきます。旅と読書が重なる瞬間です。


いろは丸展示館と坂本龍馬の足跡

鞆の浦は坂本龍馬ゆかりの地としても有名です。港近くのいろは丸展示館では、海援隊の蒸気船いろは丸事件について紹介されています。

幕末の歴史ロマンが息づく町で起きる現代の事件。その対比が物語に深みを与えているのかもしれません。

桝屋清右衛門宅と龍馬の隠し部屋

坂本龍馬のゆかりの場所としては桝屋清右衛門宅があります。ここには、いろは丸事件の際に龍馬が滞在した場所があり、「龍馬の隠し部屋」として公開されています。


医王寺と鞆城跡から見下ろす港町

少し足を延ばして医王寺へ。石段を上ると、鞆の港を一望できます。赤い瓦屋根と青い海のコントラストが美しく、写真撮影にもおすすめのスポットです。

鞆城跡は展望広場と歴史民俗資料館がある高台で、町全体を見渡すことができます。

高台からの弁天島、仙酔島

物語の登場人物がこの景色を見て何を思ったのか、そんな想像を巡らせながら景色を楽しみました。


町歩きの楽しみ

鞆の浦は決して大きな町ではありません。ゆっくり歩いても半日ほどで主な見どころを巡ることができます。

古民家を活用したカフェや土産物店も点在し、観光と散策を同時に楽しめます。ミステリーファンでなくとも、歴史ある港町の雰囲気に心惹かれるはずです。インバウンドの観光客も比較的少なく、静かに瀬戸内海の空気を感じられます。

作品を読んでから訪れると場面ごとの情景がより鮮明に浮かび上がります。逆に先に町を訪れてから小説を読み返すのもおすすめです。実際の風景を思い浮かべながらページをめくると、物語の奥行きがいっそう深まります。


まとめ

広島から気軽に行ける日帰り旅として、鞆の浦は最適な場所でした。歴史、文学、そして瀬戸内の穏やかな自然が調和した港町です。

『鞆の浦殺人事件』の舞台を実際に歩くことで、物語の世界が現実と重なり合う特別な体験ができました。推理小説の舞台巡りは、単なる観光とはひと味違う楽しみがあります。

次の休日、浅見光彦の足跡を追って鞆の浦を訪ねてみてはいかがでしょうか。お土産に懐かしい保命酒を買い、町を後にしました。